ピンホール式製作の経験による作り方アドバイス

講座とかノウハウと言う程のものではなく、経験上のアドバイスです。
基本原理や作り方などは他の方が述べておられるので、一応そちらを参考ご覧ください。
ただし結構勘違い的な?の内容もありますので、あくまでアドバイスと考え、自分で検証しテストしてみることが大事かと。
私の作り方解説は、実際に製作している金属ミキシングボールでの実践にそった説明です。

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大事な話

 「何を大げさな」ですが、ピンホールをプロット(または穴開け)するとき、 裏返しになること忘れないように。分かっていてもみんな最初ヤッチャイマス。 (40年前の一号機は南の半球で間違え、新しいボールで最初から作り直しました)

・ピンホール径と恒星球(投影球)の大きさ

 これについては、皆が参考にされる有名な講座がありますので、初めて作られる方は活用されればと思いますが、少し補足をさせていただきます。 最初に光学的に全体を決定する簡単な計算式が出てきますが、チョット「アレ?」と思います(失礼な点はお詫びいたします)。
 その内容は、

投影機で映し出される星像の大きさ(穴がじゅうぶん小さいとする)はおおよそ次の式であらわすことができます。
星像の直径=フィラメントの大きさ×(ドームの直径−投影機の直径)/投影機の直径


 ピンホール式は穴の大小で表現するわけで、これが計算式に無ければ意味がありません。私なら

星像の直径=フィラメントの大きさ×(ドーム径−投影機径)/投影機径+ピンホール径×ドーム径/投影機径

 正確には斜光線ですから三角関数ですが、軸上なので無視、これに回折のボケが加わります。 この式からフィラメントの大きさは一定なので、ピンホール径を小さくしても、 星の大きさが思うように小さくならないことがわかります。
 実際にドーム比を約10倍・恒星球30cm・フィラメントを1mmとして計算してみると、
 ピンホール径1mmの場合  星像の直径は20mm
    〃  0.5mm      〃   15mm
    〃  0.2mm      〃   12mm   これに回折のボケが加わります。

 0.2mmがこんなにボケたら多分殆ど見えないでしょう。 では恒星球を2倍にしたら、星の大きさは1/2、全体の明るさは1/4、ますます見えません。 ちなみに3mドーム上での月の大きさ0.5°は約13mmです。ピンホールってヤッパ星像甘い。
 30cm球の場合、6等星を0.5mmとするとポグソン定数(等級比 2.51)に従えば1等星は5mmとなり、ドーム上では60mm、 これは大きすぎますので妥協して2.8mm(同38mm約1.5°等級比 2)。 クリエーターの方は1°以下、理想は0.5°以下を推奨されてますが、かなり厳しい目標と言うか、ほとんど不可能です。 少しでも正確に作りたければ、恒星球をう〜と大きくするか(暗くなります)、 4等星か5等星で我慢するか、明るい星をレンズで集光または結像させるかありません。
 40年前の1号機(30cm球)では、1等星が2.6mmでした。 ピンホール式は基本小さなドームなので、目の錯覚で星が小さく見えます。 あまりこだわらなくても、元々微恒星の投影像が大きいのですから。

 

・恒星球

 恒星球の素材はアルミミキシングボール以外は紙ぐらいしか経験ないので、アルミで話させていただきます。 (リスフィルムを使う方法は小難しい計算と暗室が必要なことや、つなぎ目、耐久性、バージョンアップ等の問題。 樹脂系のボールは迷光や小さなピンホールには向かない等)
 3、4号機でも述べていますが、メーカーを慎重に選んでください。形状がずいぶん違います。 球形に近い方が星のプロットが簡単で正確ですし、何と言ってもカッコ良く美しい。 市販品の場合、表面に強靭なアルマイト処理が施されていて、塗装をする場合これを落とさないと弾かれます。 (内面の黒色艶消しは、触ることが無いので、アルマイトに細かい傷を付けるだけで充分) 方法はいろいろ試しましたが、球面の場合サンドペーパーで頑張るしか無いようです。
 ミキシングボールをガンガン叩いて球状にしていると、底が抜けたり割れたりするんじゃないかと周り心配しますが、 慎重(?結構コノ野郎です)にやれば大丈夫。 メーカーさんだって、1mm前後のアルミ板平板をプレスや絞りで加工しているんですから、多分大丈夫?


 私の使用している木製太鼓槌、柄が長すぎて使いにくいので短く切っています。 丸い石などでもいいのですが、小さいハンマーや角張ったものは良くありません。 気長に根気よく叩きましょう。



 5号機スターボール用に購入した、前川金属工業所さんの45cmミキシングボール。 何度見ても感動の、球体に近い形状と丁寧な仕上げ、素晴らしい。ただ今回少し底が少し凹んでます、アレレ?


・ピンホールの大きさ

 よくピンホール径をどんどん小さくすれば、星像も小さくなると思っている方がいますが正解ではありません。 実際自分も40年前の1号機で失敗しました。 当初30cm恒星球で6等星を0.4mmとしEX電球で2m先に投影したところ、ボケボケで微かに見える程度、全ての穴を開けなおす破目になりました。 必ずドームの大きさを想定しテストしないと、何千、何万の穴開け苦労が無駄になります。
 自分の経験から実用的な目安を示しておきました。
 
EX ドーム径2m ドーム径3m ドーム径4m
30cm恒星球 0.4mm 0.45mm 0.5mm
 これより小径のピンホールではボケが大きくなり星が小さくなりません。これを良しとするかです。
        
WPS ドーム径3m ドーム径4m ドーム径6m ドーム径8m
39cm恒星球 0.45mm 0.5mm 0.5mm
48cm恒星球 0.45mm 0.5mm 0.5mm 0.5mm

 この表は自分が投影してみた結果による実用最小ピンホールで、空欄は不向きと言うか明るすぎる、星がデカい? これ以外の値は、テストしていないので適当なことは書けません。
 EXとWPSが一見同じように見えますが、見え方が少し違います。EXの方がシャープですが、 距離が遠くなると暗くなり見づらくなります。 WPSは少しボケが大きいけど、明るいために少し離れても星として見える感じでしょうか。 (視聴距離が遠くなるので問題ないイメージです)
 この表を見て少し疑問を感じる人がいるでしょう。 「恒星球が大きい方が回折の影響減って、ピンホールを小さく出来るはず」と。 元々WPSでは0.4mmで3m以上の投影距離だと、かなりボケて薄暗くなります。 これで恒星球が大きくなり光量が小さくなると、星像としてどーよと言うことです。
 0.45mmなど中途半端なドリルは、模型(特にロボットフィギア)店などで見つかります。
 レンズ式の場合でもドーム上で結構ボケています(20年程前の中型機の話、現在の最新鋭機ではわかりません。 G社のケイロンでは回折も考慮して製作してるとかスゴイ、私が解説員として10年務めたのは同G社のGSSVです)が、 視聴距離が遠いので一見シャープに見えます。 それに対してピンホール式では基本近くで見るため、薄暗いボケがとても気になってしまうと言うことです。

・使用した星図

 プラネタリウムを作るには星の等級や位置を表した星図などが必要です。 一号機では6等星までなので全天恒星図(誠文堂新光社)を、2号機3号機は7等星まですから新標準星図(地人書館)を使いました。 8等星ならスカイアトラス2000?9等星だとウラノメトリア2000?(どちらも所有してますが見てるだけで目がくらみます)
 外からのプロット方法は、
 ・星図と恒星球を細かく区切り、手作業で写し取る(1号機、かなり正確ですが大変手間がかかります)。
 ・星図を裏返しにコピーして分割、張り付ける(2・3号機、星図を恒星球に合わせる作業に難儀)。

 正確な経緯線の引き方は、はっきり言ってトテモ難しいです。 赤緯線は厚紙にコンパス等で円と角度を描き、ボールに型を取って記入しました。 問題は赤経線です。レーザーがあればいいのですが、そんなものは無いので、 スポットライトを遠方に置き引き戸の隙間の光を代用しました。当然今一つ。
 



 40年前に購入した新標準星図(第9版)。山での天体写真などに使用したので少しボロボロです。 1950年分点ですが、星団・星雲・重星が詳しく表記された良い星図、初心者には全天恒星図がおすすめ。 もっとも今の時代ならステラナビゲーター(アストロアーツ)かな。
 



・実際の穴開け作業

 1mm以下はミニルーターを使いました。0.5mmドリルは一般の電気ドリルを使うとどんなに気を付けてもドリルを折ります。 ミニルーターだったら丁寧にやれば、ポンチ等は必要ありません(ポンチを打つとアルミボールでは大抵見苦しく凹む)。 1mm以上もルーターで下穴を開けます。 そして大事なのは毎回刃先にオイルを付け、1秒以上ドリルを当てないようにすれば、高価な精密ドリルを折ることを避けられるでしょう。
 私の使用しているミニルーターは12Vドリルチャック仕様ですが、1mmぐらいからブレが出て大きな穴は電気ドリルを使いました。 ただ3mm以上は頑張っても綺麗な穴が開きません。ヤスリかピンバイスでしょうか? 薄板用ドリルは綺麗な穴が開きますが、球体で使うと滑りやすく、イマイチでした。
 穴を開けたら面取りが必要です。普通は面取りカッターですが、小さな穴はアルミ球だとドリルの方が早く綺麗にできます。
※余計なお世話かもしれませんが、ミニルーターは一生モノですので必ずメーカー品を購入してください。 安物はパワーが無い上、すぐ壊れます(実証経験済み)。

・恒星球の外部塗装

 アルミ製のボールのアルマイトは金ピカかシルバーで、 外観を気にしなければそのままでいいのですが、球体にするためにたたき出すとそこだけ色が変わって見苦しくなります。 そこで外部塗装する場合ピンホールを開ける前に、アルマイトを削り落とす必要があります。 穴開け後では、柔らかいアルミ地金出ているピンホール周辺が大きく削れる恐れあり。 方法は100番程度の研ぎ出し用ペーパーを私は使いました。
 アルミ自体も塗装が付きにくいので、穴開け後、200〜300番前後のサンドペーパーで念入りに縦横斜めに傷を付けます。 そして完全に脱脂した後、プライマーとカラースプレーで好みの色で仕上げますが、 淡色系を使うと塗膜が厚くなりピンホールに影響が出ます(自分のプラネは白ですが、へへへです)。かといってわざわざ黒にする必要はないでしょう。
   内部は当然ですが艶消しの黒で、経験上アルマイトに傷を付けるだけで問題無いようです。

・ピンホール用電球

 現状では専用電球を使うのがベスト、基本G社のEXかW社のWPSですが、何れも2Vで電源に工夫がいります。 フィラメントは1mm以下が望ましく、一般の電球は点灯は簡単ですが方向によって星が伸びます。
 学祭などで急ぐ場合、1.5か2.5Vの豆球に少し高い電圧(黒体輻射の関係で数倍の明るさになります)をかけ、 短時間点灯させる方法がありますが、 W数の大きな電球で欲張るとドンドン星が伸びます。1.5Vでも伸びます(豆球はEXよりシャープですが少し細長い星像)。
 明るい豆球は先が少し尖ったピリケン球が主に売られていますが、先端部分が少しボケます。ニップルは大きく乱れて使えません。
「入手困難と思っていたミニマグライトの球が売られているようで、これを使う手もありか、ひとり言、使ったことないので分からない。」  近年の主流であるLEDは、発光面が平らなため配光が均一ではではありません。 また中心から外れると星像が乱れる他、高輝度のLEDは発光面が大きくなってしまいます。
 その他キセノン放電管も調べましたが、利用できるものは無さそうでした。


 WPSと、5W白色LED(左)3W緑色LED(中央)。
 WPSのフィラメントがいかに小さいかわかります。 白色LEDはCREE社のXPシリーズで発光部が比較的小さいのですがそれでも大きすぎます。1Wクラスでもまだ大きい。 緑色LEDは一般的なモノで、樹脂キャップで反射・拡散してお話になりません。
 LEDの白色光はほぼ純白で一見美しいのだけど、本当の星の色ではありません。 原理的には連続光の電球の方が、目が暗闇に十分順応すると自然な感じがします。

・WPSとEX用電源

 両電球の電源は、ネットを見ても皆さん困っておられるようですが、 2Vという電圧は殆ど使われていないので、汎用電源には見当たりません。 40年前の1号機ではたまたま2,5Vのトランスを見つけ、抵抗を併用して使用しましたが交流ですし、良い方法ではありませんでした。 実験用電源を使う方法もありますが、WPSだと5Aですからかなり高額になる上、装置に組み込むのが難しい。 また電池を使うのは今更でしょう。
 今回2号機からは、スイッチング電源と定電圧回路を使用しました。この方が安上がりで本体の中に収められます。 具体的には5Vの電源に、秋月電子のキット「SI-8008HFEモデル」を使用しました。 最大5.5Aの定電圧回路です。 ただしWPSでは定格イッパイですので、スイッチング電源側でONOFFしないと突入電流で作動しません。 動作に3V喰われるため、電源の電圧を高めに設定しておきます。 秋月電子には出力8Aの「SI-8010Yモデル」もありますが、動作が8Vからつまり12Vの汎用電源が必要で、 これだと電位差が10Vとなり発振や発熱が気になります。
 配線はなるべく短く太いコードを使用し、心配だからと電圧計や電流計を入れ足りすると、 分圧が掛かって暗くなります。電圧を安定させ、ソケット付近で電圧が正しくなるようにします。
 

・レンズ補正について

 レンズを使用する目的は星の位置調整に使う場合もありますが、主な目的はピンホール像が大きくならないよう抑えるためです。 なるべく自然な感じにするため、ピンホールだけの星より等級に合わせて少しづつ大きくなるようにしていきました。 レンズの芯を真ん中にして取り付けるだけで、ピンホール式の問題を改善でき、 もちろん結像させていませんから、無調整でどこでも投影できます。
 レンズは100均の老眼鏡を使用しました。 安いうえに形状がメニスクのようにカーブしていますのでぴったりでが、 購入するときはなるべく薄いレンズ(間違ってもフチ無しだとかメタルフレームなど×)を選びます。 レンズの芯を決める方法ですが、天井にダミーのピンホール像を投影し、レンズを置きピッタリ像が合ったところを芯としました。 実際に使ったのは、100均のごみ箱と画鋲。
 恒星球へのレンズの取付は接着材が使えない(例えばエポキシだと後で曇ったり割れたりします)ので、1.3mmタップ2本で取り付けます。

この方法の利点として
 まずピンホール式で製作しておいて、後からバージョンアップが可能なこと。
 ピンホールの位置がズレていても、レンズの芯をずらして修正。
 レンズの芯を正確に合わせれば、調整不要(軸上光線ですので光軸調整は特に必要なし)
 先輩方が以前作ってお蔵入りしたピンホール式を蘇させる等。
欠点は
 当然一個一個の加工取付に手間がかかる。
 レンズの芯しか使えなないので、100均といえどかなりの出費。
 星がゴチャゴチャのところの取り付けは、泣きたくなってくる。
 明るい星にくっ付いている暗い星は、道連れにするか、死んでもらう。


 レンズ補正式ピンホールプラネタリウムの原理。 原理と言ってもとても単純で、ピンホールを通過した光が拡散しないようにしているだけです。
 なおレンズの度数の意味はご存知と思いますが、光線束の簡易式で
f=1/D  f:焦点距離(単位m)   D:度数  です。

 左の図からピンホールが0mmでも、最小星像は光源の大きさで決まってしまうことがわかります。 いかに明るくて小さな光源(0mmのフィラメント)を使うかですが、現状では大発明でもないと無理でしょう。

 これ以外に光の回折が及ぼす影響も大きいのですが、難しくてよくわかりません。 実際に見えるピンホール像は、回折と干渉で回折リングのように見えます。
 





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