今の主力 LHPP-3プラネタリウムの自作

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実験的に終わった(本当は本番だった)2号機LHPP2を元に、3号機LHPP3の製作です。
目指すは、
・恒星球を大きくして5等星以下を小さく、そして4等星までレンズ補正。
・1等星をさらに小さく。
・ピンホール式の難題である、ポグソン定数の達成。
・2号機よりコンパクトにして、使いやすくする。
以上、顛末をご覧ください。
尚、2号機でもですが、製作にあたり業者に部品製作の依頼等はしておりません。
部品の多くは既成品、手持ちの工具といえば安物の卓上ボール盤と電気ドリル、ミニルーター、金ノコ、ヤスリ・・・です。

 先ずは購入した48cmシルバーアルマイトボールを、小さな木製の太鼓槌で丸くたたき出します。 アルミと言ってもこのサイズですと結構厚みがありそう簡単にはいきません。とにかく頑張ります。 その後表面のアルマイトをサンドペーパーで削り落とすのですが、アルマイトの下から、粘っこい黒い層が出てきて、 かなり手こずりました。シルバーは懲り懲り、次はシュウ酸ボールと思いましたが別の理由がありました。
 サラダボール(ミキシングボール)はどのメーカーでもほぼ同じと思っていたら、全く違いました。この後 45cmシュウ酸ボールを購入しビックリ、感動です。そのメーカー名は前川金属工業さん。 このクラスでは多くが「へら絞り」で、このボールも例の黒い層が出てきました。 絞り加工時の表面の傷を隠すための処理らしいと分かります。
 でも前川さんのは絞りが丁寧でとても滑らか、ごく僅かな黒い層でした。それ以上にスバラシイのは全体の形状、 殆ど完全な球体で(当然底も深い)、底をちょっとたたき出せば完成、最高。 まるでプラネタリウムのために有るようなボールです。他のサイズは分かりませんが、45cmだったら絶対おすすめです。 他のメーカー品だと洗面器のような形状をしていて、頑張ってもなかなか球体にはなりません。
 またプラネとは関係ないのですが縁の処理も見事、使い手の立場で丁寧に作ってありとても量産品と思えません。 もし自分が調理人だったら、このボールを使いたいです。


 星図を貼り付け、穴を開けていきます。でもミキシングボールが完全な球体でない上、ケガキ線も正確ではありません。 そのため分割した星図を少しずつ修正印刷し直すなど、下準備だけでも大変です。 小さなピンホールはミニルーターを使用(電気ドリルでは精密ドリルを簡単に折ってしまいます)。 星数は15,000個で大変なことは当たり前ですが、星空が少しずつ出来ていくと結構ハマリます。 それよりピンホール両面の面取りにウンザリしました。
 意外と難しいのは大きな穴で、普通のドリルでは慎重にやってもおむすび型の穴しか開きません。 3号機から薄板用ドリルを使ってみましたが、今度は表面で歯が滑ってイマイチの結果。




 穴を開け終わった球体。お気づきと思いますが、3号機から20mmのアルミ帯板を使った被せ式です。
 ボールのツバを切り落とすと、ブヨブヨになってしまいキレイに造るのにかなり苦労しました。 でもこれで赤道上の問題は解決。補正レンズも楽に取り付けられます。ただケラレが出ないよう相手にバカ穴が必要。
 穴の大きさとレンズの度数は次の通り。
・7等星  0.5mm
・6等星  0.7mm
・5等星  1.1mm
・4等星  1.8mm   D1とD1.5(当初D1を考えたのですが途中でD1.5に変更。混ざってます)
・3等星  2.9mm   D2.5
・2等星  4.5mm   D2.5
・1等星  7.5mm   D3.0
・0等星以上    D3.0    0等星は9mm シリウスは11mmです。
M31は0.4mm約20個で作りました。1m位だと星っぽいですけど、3m程で星雲状にボケてくれます。

 恒星球が大きくなるにつれ、レンズの焦点が近づいてきて、100均のレンズ構成では苦しくなり、 ダミー星像で検討し妥協した所もあります。 度数を強くすると更に星を小さくできますが、7等星から順番に大きくしたかったので、この組み合わせとなりました。
 レンズの光量ロスを10%とすると、1〜6等星ではポグソン定数をほぼ達成していますが、 7等星は明るすぎ、0等星以上は暗い。7等星まで欲張った結果です。
 この後洗浄の後、スプレーでプライマー・塗装を行いました。



 電源部分です。電気知識はあまりありませんので、見せたくない所、配線もグチャグチャです。 シャフトから出ている太く白いコードが2V5AのWPSつまりプラネタリウム電球用、AC用のかなり太いコードですが、 長さ50cmでも分圧がかかり電圧が下がります。 最終的にはその先の定電圧回路で、実際に点灯した状態でソケット近辺が2Vになるよう調整しました。
 左の大きい方のスイッチング電源(24V)はパワーLEDと冷却ファン、アクセサリー用です。 真ん中の小さな2つの基盤は出力1.1AのLEDドライバー。一応誘導電流対策にショットキーバリアーとチェナーダイオードを入れました。 右下のセメント抵抗は冷却用24Vファンを電圧を落として使用するための物です。





 光源部分、つまり心臓部。中央の電球がプラネタリウム用のWPS。 今回何十年ぶりにプラネタリウムを作ろうと最終的に決めたのは、このWPSが入手できたから。明るい!
 周辺の8個のLEDが自称スターボール用です。元々は5WのパワーLEDですが都合1.1A約3Wで駆動しています。 当初最大2A用のLEDドライバーを使用したのですが、星瞬き用のシンクロナスモーターと相性が悪く、度々ドライバー焼いてしまいました。 今は安全のため両方外しています。
 奥にチラッと見えてますが、恒星球と回転シャフトをフランジで接続しました。 2号機までは直結で、組立・変更・調整の度に光源部分全てをバラバラする必要があったため、簡単に外せるようにしました。

※EX vs WPS
 ピンホール用に現在入手可能な電球として、G社のEX(2V2A)とW社のWPS(2V5A)があります。 当然ながらWPSの方が明るいですが、フィラメントがその分大きくなり星像に現れます。 単に「明るいから」と安易に選ぶと、ちょっとガッカリとした結果なりかねません。
 39cm球の時、WPSでも十分シャープと思っていら、半球だけの仮点灯で愕然とします。 明るいんだけど6等星や7等星がデカイ! しっかり落ち込んだ後もう一度見直すと、3m以上の距離に離れて見ればそこそこシャープ、そして全体に丸い均一な像、一安心です。 おおざっぱに言えば5m以上のドームならWPS、以下ならEXでしょうか?
 これらの電球はG社、W社用ですのでどちらが優れているのではなく、考え方でしょう。 本来理科教材用ですから、薄暗い理科室だと明くて均一なWPSが、真っ暗に出来るんだったらEX?
 


 2号機からアイデアとしてネットを考えました。 これを小刻みに動かして全ての星や天の川を、ちかちかユラユラさせます。 小さな星は効果抜群ですが、大きな星だとネットが動くのがバレます。
 少し暗くなること、駆動用シンクロナスモーターでLEDドライバーにトラブルが出たので、今は使用していません。



 恒星球本体です。黒のビス止め部分が凸レンズです。 100均の老眼鏡からミニルーターで切り出しました(ちょっと危険な作業)。 レンズは大きいのですが使えるのは光軸の中心だけなので、2等星以上は真ん中だけを、 3等星以下はもったいないから光軸を中心に4分割し、中心方向を使いました。 2号機では芯だしが不十分で星のズレが目立ちます。本機では器具を作りしっかり測定しました (100均のゴミ箱にピンホールを作り、天井に投影、レンズの芯を出す装〜置)。

 天の川は色々検討したのですが、結局1号機の改良で、 4〜5mmの穴をあけ薄いアクリル(CDのケース)に透明 エポキシを内側に薄く塗り接着しました。


 
 真ん中にプレアデスが見えます。ピンホール式の難しい所で、苦労してもたいていグチャグチャになります。 ここはレンズの収縮を利用して作ってあり、恒星球上で2倍に拡大して穴を開け、凸レンズで本来の大きさに戻しました。 かなり苦労しましたが上手くいきました。
 この方法で主な2重星やゴチャゴチャした部分も処理しています。
 


 オリオン中心部。レンズ補正最大の難所、2号機では失敗です。 3号機は少し余裕があるので何とか取り付けができました。 三つ星のδ星がずれていますが、レンズの光軸を外して正しい位置に修正してあります。
 止めるビスはタッピング「なべ精密Bタイト黒色」で、先端が平らです。 2号機はホームセンターの1種A型で先が尖って、危険でした。 ネジはなるべく2本使い、軽く閉めます。強靱なポリカでも1本で強くめると、後日割れてきます。



 ほぼ完成したプラネタリウム。夕焼け投光器の制御回路などは組み込んであるのですが、肝心の本体まだ作ってありません。 プラネタリウムですから、本当は太陽系や星座の投影機が欲しいところ、でも付ける場所や方法が見つかりません。


 投影映像。タングステン電球ですから本来は電球色ですが、 目が十分暗闇に慣れてくるとこんな感じ(プルキンエ効果だったかな?)、 だいたい写真ぐらいの明るさとイメージです(すいません、チョッとレタッチで誇張してあります)。 レンズを付ける前は昼行灯でとても暗かったのに、光量的には増えてないのにも関わらず明く感じられます。
 残念ながら星は白一色です。かつての1号機では写真用のアセテートフィルターで着色しましたが不自然でした。
 元々恒星は黒体輻射ですから連続スペクトルです。赤い星と言っても夜だと白色光に赤みが僅かにが混じっている感じ、 また面積のある惑星ならともかく、点光源の恒星ではシンチレーションや目のスター現象などもあって実際の見え方はかなり微妙です。 これをピンホール式で簡単に再現するのは、とても難しいです難題です(色々考えましたがよい方法が見つかりません、レンズ式でも同じかも)。

 今回はとにかく明るくしたかったので、製作にかなり無理がありました。まだちょっと明るい星が大きい。 もし4〜5mクラスのドーム投影だったら、電球にEXを使い6等星までで作ると、さらにシャープに出来そうです。 40cm以上の恒星球体として、6等星を0.4mmとすれば4等星くらいまで十分小さいので、明るい星の集光を高めることができ、 更にレンズ式に近いシャープなプラネタリウムが出来そうです。
 また既存のピンホール式の1〜2等星などにレンズを付け足せばバージョンUPも可能かな。
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